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酒好きの進藤
12: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/15 03:50:29 ID:JkAMRIXh0
江戸時代、麹町に進藤という一人の武士がいて、これが落語や物真似を得意としていた。侍なのにこういう真似が得意だとはあまり感心されたことではない。

しかし酒の席などでは盛り上げ役として重宝されていた。
ある日、組頭(上司のようなもの)のもとで宴会をやることになった。
7、8人集まってきたのだが、進藤はまだ来ない。

酒好きの進藤ならすぐに来るだろうとみな思っていたのが、どうも今日は様子がおかしい。

「あいつ、どうしたんだ」と組頭は案じていたが、玄関に進藤が来ているという。組頭が玄関まで出てみて「おい進藤、遅かったじゃないか」と言葉をかけると「はぁ。あの、自分はこれから首吊りをしなきゃいけないんです。」「何を言ってやがる」「外で人が待っているんです。それでは。」と立ち去ろうとする。慌てて呼び止め、「おい進藤が乱心だ、誰か出てきてくれ」と言うと、奥から3人ほど駆けてきて、進藤を家の中に引き戻した。
組頭が奥へ連れてって「酒でも飲め」と促すのだが、「外に人を待たせているんです」「一杯でいいんだ。付き合ってくれよ」「はぁ…」

仕方なく、といった感じで進藤も酒を飲む。組頭は次々と酒を勧めて、進藤もついそれに従ってしまう。

「進藤、あの物真似やってくれよ」と他の同僚たちも囃して、いい気分の進藤も自身の持ち芸を披露。もはや、人を待たせていることなんて忘れたようだった。

13: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/15 03:54:04 ID:JkAMRIXh0
進藤が物真似を披露する中、組頭は若党にそっと耳打ちして「おい、ちょっと外の奴の様子を見てきてくれ。なに、入れることはない。様子を見てるだけでいいんだ」と伝える。
若党も了承して玄関へ去っていった。
さてその若党、いつまで経っても帰ってこない。

用人に様子を見させに行ったところ、その若党が首を吊って死んでいたという。
恐らく進藤に首吊りを促したのは死神で、若党は進藤と間違えられ、首を吊るはめになってしまったんだろう。


鈴虫
16: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/15 04:17:25 ID:JkAMRIXh0
面倒臭いし長いから簡潔に書くぞ。


さる家に『鈴虫』という名管があった。
とても素晴らしい笛であると評判であり、この評判を聞きつけた佐井木という男は、持ち主の春日という男に頼み込み、一時的に借与してもらうことに成功。しかし頭がよろしいとは言えないこの男、妾宅にこの『鈴虫』を持ち込み、事後に吹いてしまった。

しかも、吹いた曲が怪異を呼ぶとされた「石橋」だからまずい。

笛はたちまち、おぞましいほどの音色を放ち、妾の毛を逆立たせ、その妾と密通し隠れていた又七も腰を抜かし、存在がバレてしまう有様だった。

笛を吹き終わり、又七の存在に気付いた佐井木。すぐさま又七を殺すのだが、その又七の血が笛にかかってしまった。

慌てて水桶を持ってきて洗い、ホッとする佐井木。お祓いや清めをするという知恵はなかったようだ。
翌日佐井木は、笛の舞台で「石橋」を披露。その場のほとんどの人は音色に震えながらも、「佐井木はスゴイ技術を持っている!」と感嘆。

しかし一人、笛の達人といわれた隠居の渡辺という男は「その笛はどこかに欠陥がある」と指摘。逆上した佐井木は渡辺を惨殺。
笛はまた鮮血を吸った。

17: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/15 04:34:34 ID:JkAMRIXh0
佐井木が殺した渡辺というのは幕府にも顔が利く人物で昨日殺した又七という者とは比べ物にならない。佐井木は切腹、笛も元の持ち主・春日のもとに戻った。

しかし、数日の間に3人の人物を殺した『鈴虫』。

江戸の民の噂の種になり、連日詰め掛ける修験者やら物好きやら笛吹きに、春日は弱り果ててしまった。
結局春日は笛を清めた後、物置の奥に『鈴虫』を封じる。



しかし『鈴虫』の魔力は未だ力を失っていなかった。

春日には大変美しい娘がいたが、この娘がにわかに病に倒れ、「『鈴虫』の「石橋」が聴きたい」と春日に言った。
春日は大変迷ったが、もはや娘は死を迎える直前。最期に聞かせてやろう、と『鈴虫』を持ち出した。この春日も笛には相当の自信があり、見事に吹いてみせた。場は凄惨で陰鬱な雰囲気に包まれ、隣の部屋にいた春日の弟子たちも震えるほどであったという。
春日が「石橋」を吹き進めるたびに娘の顔は血の気を失っていく。
春日はもはや吹くのをやめてしまいたかったが、『鈴虫』の魔力か否か、吹く行為を止められない。

春日が「石橋」を吹き終わったとき、娘は事切れていた。

18: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/15 04:45:39 ID:JkAMRIXh0
春日はある部屋に娘の遺体を安置。
しかし朝になると、その娘の遺体が、『鈴虫』と共に盗まれていた。
犯人は娘の許婚だった鳴海という男だった。

この鳴海が笛を持ち出し、夜な夜な街を徘徊。その音色を近くで聞いたものは必ず発熱するという現象まで起こり始める。

春日は娘の遺体を取り戻し、笛を焼却したいと考え、先に殺された渡辺の子で、これも笛の名手であった勘助という男と組む。
勘助は古くから伝わる『瓦落とし』という名管を持ち、『鈴虫』に戦いを挑んだ。

鳴海と勘助では笛の技量が全く違う。圧倒的に勘助が上であるから、負けることはないであろう、という考えからであった。
しかし夜、いざ『鈴虫』に挑むと、これが中々手ごわい。

勘助自身も鳴海の『鈴虫』のペースに引き込まれ、夢の世界へ入ろうとするところへ、春日がやってきて、勘助を励ましたものである。
勘助も元気を取り戻し、ついに『鈴虫』の音色を完全に消すことに成功した。

朝になり、鳴海が潜んでいたという家に押しかけると、当の鳴海は既に息絶えていた。
奥の部屋では死んだはずの春日の娘が寝息を立てており、春日と勘助を驚かせたものである。
この『鈴虫』、現代に入り、春日の子孫によって破壊されたそうだ。

20: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/15 04:54:44 ID:7DyPj0zu0
おつ
こういうのを弁士が語ってるの聞いたら最高だろうな



「くれえ、くれえ」
23: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/15 06:29:38 ID:JkAMRIXh0
まだ残ってたのか
せっかくだから過去スレから引っ張ってきた
寺の住持が夜中に起きてきて、団炉裏で餅を焼き食べていたところ灰の中からにょきっと手が生えてきて、 「くれえ、くれえ」といった。
あまりに切ない声なので、住持が餅を一切れ握らせてやると、手首は嬉しそうに掌をヒラヒラさせ、灰の中に消えてしまった。
朝に確かめてみると、炉端に杓子が転がっており、その傍に食べ残しの餅が散らばっていた。どうやら、餅をねだったのは杓子だったようだ。







長大隈守
24: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/15 06:33:28 ID:JkAMRIXh0
長大隈守のところでは狐を養い、五口の扶持を与えてやっていた。これは先祖・長連龍が合戦で道に迷った際、狐が出てきて道を教えかつ食料の在り処も教えた故事による。
その狐の世話を任されている下僕の弥助は、他に主人お気に入りの鶉の面倒も見ていた。それがある日、何者かに食い殺された。何者かといっても狐以外に犯人はおらず、弥助は狐たちの扶持を召し上げてしまった。
翌日の朝、四匹の狐が庭に並び、断罪を待つが如く首をうなだれていた。
見ると、その前に彼らに殺されたに違いない一匹の狐の死体があった。
そいつが鶉を食べてしまったので、みんなで処刑したというところであろう。
話を聞いて大隈守は感嘆し、わざわざ狐たちの前に出て「よしよし、赦してとらそう。扶持も今まで通り、五口与えるべし」と答えると、狐たちは安堵した表情で退出した。
ときに、大隈守の息子が病に苦しんでいたがその日を境にピタリと治った。狐は霊獣ゆえ、ときに寿瑞のあらわれるものなのである。










制度利用者
26: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/15 07:03:58 ID:bN6a77Sc0
生類憐れみの令と呼ばれる一連の政策で建てられた野良犬保護施設
定期的に火事が起きたり伝染病が発生したりで保護した野良犬が何回も全滅している。しかし保護施設の担当役人の名前も野良犬の餌を買っていた記録もない。
はてさて最初から野良犬を殺すことが目的の施設だったのか名前のない役人が野良犬の餌になったのか…




転載元
http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1358188802/